会社設立

外国人が日本で会社を設立する前に 知っておくべき注意点と手続きの流れ

外国人が日本の会社で働く姿はあまり珍しいものではなくなったものの、外国人が日本で会社を設立するとなると、特別な資格や方法が必要なのでは?と思いませんか。外国人と日本人とでは会社設立の仕方に何か違いがあるのでしょうか。

この記事では、外国人が日本で会社を持ちたいと考えた時にあらかじめ知っておきたいビザや法律に関する知識と注意点についてお伝えします。

外国人が日本に作ることができる会社の種類は

外国人は日本人同様、個人(個人事業主)、法人のどちらの形態でも事業を開始すること可能です。

会社の種類と特徴

日本で設立できる会社の主な種類と特徴は以下の通りです。

設立するなら株式会社がおすすめ

外国人が日本に設立するなら、「社会的信用度が高い」「健康保険、厚生年金への加入ができる」「外国人の経営・管理ビザの取得が比較的用意」となる、株式会社の設立がおすすめです。

外国人が会社設立をするために必要な在留資格

外国に居住する外国人のみが日本の会社の代表者であっても構いません。また、外国人であっても所持している在留資格によっては日本人とほぼ同じように会社を設立することが可能です。しかし、代表者になる・会社を設立する・就労が許可されているという事と、経営・管理ができるという事は違います。まずは、それぞれの在留資格保持者に許可されている内容の違いを把握しましょう。

「就労」「会社設立」「経営・管理」ができる在留資格

「永住者」「永住者の配偶者等」「日本人の配偶者等」「定住者」の在留資格のある人は、日本で就労することが可能です。そして、日本人と同じように発起人になること、株主になること資本金一円以上で会社を設立する・その会社で取締役に就任して経営・管理したりする事が可能です。

「就労」は可能だが、「会社設立」「経営・管理」ができない在留資格

次の2-3.に出て来る「経営・管理ビザ」以外の「就労可能なビザ」では、会社設立や経営・管理をする事が許可されていません。例えば、「留学」の在留資格では、1週間に28時間以内の就労、又は、個別に許可が下りた場合にのみ収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動を行うことができますが、会社設立や経営・管理はできません。

在留資格「経営・管理ビザ」

要件を満たしていると、外国人が日本での「経営・管理」を許可される在留資格への申請が可能となります。それが在留資格「経営・管理」です。

注:本来「ビザ」は、上陸手続きに必要な「査証」を示し、上陸許可が下りると使用済みになる物の事ですが、ここでは一般的な捉え方と同様に、以下では上陸後も含めた在留資格のことを「ビザ」として記事を進めて行きます。

経営・管理ビザ(在留資格)について

外国人が申請して会社設立や経営を行うことができる「経営・管理」ビザとは、どのようなものなのでしょうか。

経営・管理ビザとは

「経営・管理」「ビザ」とは就労ビザの一つで、日本で貿易その他の事業の経営を行い、当該事業の管理に従事する活動(企業等の経営者、管理者など)を行うための在留資格の事です。

経営・管理ビザの在留期間

経営・管理ビザでの在留期間は5年、3年、1年、6ヶ月、4ヶ月又は3ヶ月の6種類があります。在留期間は、会社の事業規模や安定性などについて入国管理局が総合的な審査を行った上で決まります。

経営・管理ビザは会社設立前に申請できる

「経営・管理」ビザは、会社設立前に申請する事ができます。まだ会社が無い状態でビザの申請をして4ヶ月の在留許可が下りたら、滞在期間が3ヶ月を超えて一定の条件を満す日本滞在者に交付される「在留カード」を使って住所登録をする事が可能となるので、自分個人名義の住所登録や銀行口座の開設をして、自分一人で会社設立を行うこともできるようになります。

経営・管理ビザを取得するには

「経営・管理」「ビザ」は、どのような条件下で取得することができるものなのでしょうか。注意点とともにお伝えします。

経営・管理ビザの取得要件

新たに投資して事業経営を行う場合

  1. 事業所が日本に存在すること。事業開始前であれば、当該事業を営むための事業所として使用する施設が日本に確保されていること。
  2. 経営・管理ビザを取得する外国人1人あたり500万円以上の出資額があること。または、2名以上の常勤職員がいること。
  3. 事業内容が実現可能であり、安定性・継続性があること。
  4. 実際に経営を行うこと。

申請人が事業の経営・管理に従事しようとする場合

  1. 事業の経営または管理について、3年以上の経験(大学院において経営または管理に係る科目を専攻した期間を含む)を有すること。
  2. 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

経営・管理ビザの注意点①必ず取得できるわけではない

「経営・管理」ビザは申請手続きをしても必ず取得できるわけではなく、資本金を支払い、常勤職員を確保するなどの準備をしても許可されない可能性もあることを理解した上で計画を立てる事が必要です。

経営・管理ビザの注意点②外国人経営者の在留資格基準がある

外国人経営者の在留資格については明確な基準があります。
出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」 より

事業所の確保

月単位の短期間賃貸スペース等の利用や屋台等の利用はできません。 賃貸借契約の使用目的が事業目的であること、賃貸借契約者が当該法人の名義であること、当該法人等による使用であることを明確にすること等が定められています。住居として賃借している物件の一部を使用して事業が運営される場合についても定められた基準に従う必要があります。

事業の継続性

事業活動において単年度の赤字決算が出ている場合でも、事業の継続性については今後の事業活動が確実に行われることが見込まれることが必要なため、直近二期の決算状況により貸借状況等も含めて総合的に判断されます。債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に 具体的な改善の見通しがある事を前提として事業の継続性が認められます。

事業者としての義務の履行

在留資格「経営・管理」で在留する外国人は事業の運営を適正に行うことが求められるため、自らの運営する機関が、「租税関係法令」「労働関係法令・社会保険関係法令」等、各種公的義務の履行に関する法令を遵守する必要があります。また、法令に適合していないと認められる場合には、消極的な要素として評価されます。

経営・管理ビザの注意点③更新がある

「経営・管理」「ビザ」の更新にも入国管理局による審査が必要です。「経営・管理ビザ」の在留期間は通常1年間ですが、二期以上連続で黒字決算の状態が続いている場合には、3年間の「経営・管理ビザ」の発給を受けられることがあります。4-3の在留資格基準同様、日本での経営者・経営・会社の状況を総合的に判断して決定されます。

「経営・管理」ビザの注意点④活動内容の厳守

活動内容を変更し、他の在留資格に該当する活動を行おうとする場合は、速やかに申請しなければなりません。継続して3ヶ月以上、現に有している在留資格に係る活動を行っていない場合は在留資格の取消しの対象となります。

会社設立の流れ

日本人が会社設立する場合同様、株式会社は次の流れで設立されます。

  1. 基本事項の決定
  2. 定款の作成
  3. 資本金の払込・払込証明書の作成
  4. 登記申請
  5. 会社設立後の各種届け出・申請

まとめ

外国人が日本で会社を設立する為に、経営・管理ビザの取得が必要な場合があるということはおわかりいただけましたか。株式会社を設立する登記申請の流れ等は日本人の場合同様ですが、経営・管理ビザの取得・更新には尊守すべき明確な基準があり、ビザの申請に必要な要件や事業規模があります。ビザに関する規約は変更される事もありますので、常に最新の情報を収集しておきましょう。