会社設立 許認可

定款に記載しなければならないこと(絶対的記載事項)

会社設立時に作成する定款(ていかん)には、3つの記載事項があります。中でも「絶対的記載事項」は必須で、記載内容にも注意しなければなりません。

今回は、定款で最も重要な項目ともいえる「絶対的記載事項」に記載すべき5つの内容について、詳しく解説をしていきます。

定款(ていかん)の絶対的記載項目に記載すべき5つの内容

まずは定款とは何かについて簡単におさらいをしましょう。そして、絶対的記載事項に記載する必要のある5つの記載事項についてご紹介します。

定款は「会社の憲法」

会社の基本的な規則をまとめている定款は、別名「会社の憲法」とも言われます。定款に記載する事項は大きく3つに分類され、項目によって記載内容や効力などが異なります。

絶対的記載事項

今回の記事でもご紹介する絶対的記載事項は、法律により定められており、定款を作成するにあたり欠かせない内容です。絶対的記載事項の内容に不備があれば、定款そのものが無効になってしまうので、慎重に内容を精査する必要があります。

相対的記載事項

記載がなくても定款自体に影響はないものの1つが、相対的記載事項です。しかし相対的記載事項の内容については、定款に記載していないと効力がなくなってしまうので、決めた時には必ず記載しなければならない事項です。どういった内容を記載すべきかをきちんと判断しなければなりません。

任意的記載事項

任意的記載事項も相対的記載事項と同様に、記載がなくても定款そのものに影響はありません。また、定款に記載してもしなくても、効力がなくなることもないものです。会社の基本的な事項として、あえて定款に記載する、というものだといえます。

絶対的記載項目に記載すべき5つの内容とは

3つの記載事項のうち、最も重要なのは絶対的記載事項です。定款そのものの効力に大きく影響するものなので、記載すべき5つの内容をしっかりと確認しましょう。

尚、記載事項にミスなどがあると定款を作り直さなければならない場合もあるので、司法書士など会社設立に関する知識が豊富な専門家に相談するのも1つの方法です。

①目的

目的とは、事業目的、事業内容のことです。

ケーキ屋さんなら「ケーキの製造・販売」、カフェなら「飲食業」のように、どのような事業を行う会社なのかということを記載します。会社は法律上、定款の「目的」に記載された範囲の中でしか事業を行うことができません。

現在行っている事業はもちろんですが、「事業拡大をして〇〇のジャンルに挑戦したい」「将来的には△△の事業にも参入する」という予定がある場合には、将来を見据えて、その事業についてもいくつか記載しておくと良いでしょう。

また、旅行代理店やペットショップ、美容院などのように許認可が必要な事業を行う際には、定款の目的に事業内容が記載されていないと許認可が受けられませんので、覚えておいてください。

②商号

商号とは「会社名」のことです。会社名を決める際には、

  • 使える文字が決まっている
  • 入れなければいけない文言がある
  • 同一住所に同じ社名は使えない
  • 使えない文言がある

など、大きく4つのルールがあります。また、会社名を決めるポイントや注意点もありますので、詳しくは別記事をご参照ください。

③本店の所在地

本店の所在地には、会社がある場所を書きます。詳細に書かなければいけないように思われますが、実は本店の所在地は東京とであれば区まで、その他の地域でも最少行政区画である市町村までの記載でよいです。

番地までしっかりと記載してはいけないという決まりもありませんが、引っ越しなどがあった際に定款を変更する必要が出てくるので注意しましょう。

最近は業種や事業内容によっては事務所を構えず、自宅をオフィスとする方も増えています。プライバシーや契約内容などの問題から自宅を本店の所在地とするのが難しい場合には、バーチャルオフィスを利用し、本店の所在地として記載する事も可能です。

④設立に際して出資される財産の価額又はその最低額

会社設立の際に出資される額の最低額とは、資本金の金額のことです。資本金額は1円から登記可能となりましたが、実際に、元手が1円で事業を行うのは難しいでしょう。会社の信用にも影響しますので、4~6か月程度の運転資金を目安として額を決める、という方も多いようです。

ちなみに定款には具体的な金額を記載するだけでなく、最低額として「〇〇円以上」と記載することも可能です。具体的な額が決まらない場合は最低額を記載し、定款作成後に決定することも可能です。

⑤発起人の氏名または名称及び住所

お金を出資する人を発起人といいます。発起人は1人でも、複数人いてもかまいません。本店の所在地とは異なり、発起人の住所は番地まで記載します。氏名・住所ともに印鑑証明書と同じでなければ修正を求められるため、必ず印鑑証明書を見て確認しながら記載しましょう。

間違えやすいのは「渡邊」と「渡辺」などの漢字、「〇丁目△番地」と「〇ー△」など住所の細かい部分の記載です。これらもすべて印鑑証明書の内容に合わせるようにしてください。

未成年者が発起人になる場合の注意点

15~19歳の未成年者は、保護者の同意があれば発起人になることができます。しかし15歳未満はそもそも印鑑登録ができないため、保護者の同意があっても発起人になることができません。

法人が発起人になる場合の注意点

発起人には、個人だけでなく法人もなることができます。法人が発起人になる際には、双方の会社の事業内容が類似していないと、公証役場での認証を得られないこともあるので注意しましょう。

原則として、定款に記載されている事業目的のうち最低1つは重複している必要がありますので、お互いの定款を確認した上で発起人になってもらうとスムーズです。

発行可能株式総数について

株式会社を設立する場合に発行する株式に関する記載事項として、発行可能株式総数というものがあります。
会社法27条によると、発行可能株式総数については絶対的記載事項に含まれていません。しかし、発行可能株式総数を定めないとデメリットもあるので注意が必要です。

発行可能株式総数とは

発行可能株式総数とは「会社が発行できる株式の最大数」です。発行済株式総数とは異なりますので注意しましょう。

発行株式総数の増加によって、持ち分率が変動し議決権過半数の地位にも影響する為、発行可能株式総数を明らかにしておかなければいけません。株主が自分の持ち株比率がどうなっているか知るための重要な事項であると言えます。

また、発行可能株式総数の上限を決めておき、その範囲内で自由な株式を発行できるようにすることで、株式の発行による資金調達を必要な時に、迅速に行なえるようにし、さらなる事業の発展を推し進める事にも繋がります。

発行可能株式総数を定めないと

前述の通り、発行可能株式総数は絶対的記載事項には含まれていません。しかし、会社法37条で「株式会社設立時までに、発行可能株式総数を定款で定めること」が明記されており、絶対的記載事項に準ずる重要な記載事項の1つだといえます。

つまり発行可能株式総数は「定款認証までに記載する必要はないが、会社設立までには記載しなければいけない」というものです。定款認証後に記載する場合、発起人全員の同意のもと、定款を変更しなければなりません。定款の変更には手間だけでなく費用もかかるので、定款認証前に定めておくことをおすすめします。

まとめ

定款の絶対的記載事項には、5つの記載事項があります。また、絶対的記載事項の内容には含まれないものの、同等の重要度を持つ発行可能株式総数も、会社設立時までには記載する必要があるので注意してください。
初めての会社設立では、専門家の話を聞きいてサポートを受けた方がスムーズに進むこともあります。絶対的記載事項の不備で定款が認証してもらえない、認証後に変更の手続きをしなければならない、ということのないよう慎重に定款作成を進めましょう。