株主は権利だけでなく責任もある?会社設立で株主について注意すべき点とは?
株主と聞いて、どんなことをイメージしますか?「株主優待制度を受けられる」「株主総会に参加できる」「配当金を受け取れる」などプラスな要素ばかりを想像する方が多いかもしれませんし、「どの銘柄が儲かる、損をする」ということをイメージする方もいるかもしれません。確かにそれらも株式の役割ですが、株主になると、経営に対し意見を言う権利、経営を監視する責任も持つことになります。
今回は株主になるための条件や注意すべき点、そして会社設立の際の株主について意識すべき点についてご説明していきます。
株主になる条件
株に興味がなくても「株主」というワードは耳にする機会があると思います。どうしたら「株主」になれるのでしょう。実は以下の2ステップで誰でも株主になることができます。
- 証券会社で口座を開設
- 株式を購入する
証券会社で口座を開設した後、株式の購入に必要な代金を口座に預け入れると、証券会社を通じて株式購入ができます。購入の際には最低購入代金はもちろん、証券会社に支払う売買手数料が必要です。手数料などの詳細については、証券会社窓口で確認をしましょう。
また、株主になると株式購入をした会社から優待を受けたり、経営に介入したりすることもできます。
株主になると優待などが受けられる
株主と聞いて、多くの人がイメージするのがこの「株主優待制度」かと思います。株主優待とは「企業が株主に、自社サービスや商品を無料で提供すること」です。
銘柄ごとに、株主優待を受けるのに必要な枚数、受けられるサービスが決まっているので事前に確認しましょう。基本的には100株以上の購入が条件になっている企業が多いようです。株主優待は任意の制度であるため、全ての企業が実施しているわけではありません。しかし、上場企業のうち1500社程度が株主優待制度を取り入れています。
株主優待は自社サービスや商品を知ってもらうきっかけになるため、企業にとってもメリットがあります。また、株式をすぐに売却されるより、長く保有してもらう方が企業としても当然ありがたいですから、長期保有制度を取り入れているところも増えてきています。
持株比率は経営に影響する
株式会社の最終意思決定は株主総会で行われますが、議決権は持ち株比率に応じて与えられる、つまり持ち株比率の高い株主の意見が通りやすいということです。
持ち株比率の高い株主は、株主総会でその会社の経営に意見をすることができるということも踏まえながら、どの株式を購入するのか検討してみるのも良いかもしれません。
株主には2つの権利がある
一般的には「株主=株主優待」のイメージが強いですが、株式を保有すると「自益権」「共益権」という大きく2つの権利を持つことができます。
株主の権利①自益権
「自益権」とは、会社から受ける経済的な利益のことです。自益権には、剰余金配当請求権といって、株主となっている企業の利益を配当として受け取れる権利、また会社を清算する際に残った財産の分配を受けられる残余財産分配請求権があります。
株主の権利②共益権
経済面の利益を自益権というのに対し、経営面での権利を「共益権」といいます。
共益権に含まれるのは、株主総会で株主が議題に賛否を示す権利である議決権や、取締役の経営責任を、株主が会社に代わり追求し、損害賠償請求をする権利、株主代表訴訟などです。
また、共益権には一単元株でも保有していれば認められる単独株主権と、一定数の株式の保有が必要な少数株主権があります。
株主に課せられる責任は
株式会社は有限責任であるということは、会社設立を考えている方の多くが知っている情報だと思いますが、実は会社に万一のことがあった場合には株主にも責任が課せられます。
ここからは、株主責任の内容について説明していきます。
株主責任とは
例えば企業が問題を起こした際、株価の下落・株主としての権利の喪失などがあります。これが株主責任です。但し、株式購入の際に支払ったお金が返ってこないことはありますが、株主に対してそれ以上の請求がくることはないので安心してください。
しかし、金融機関から資金調達をする際、実質的な経営者が株主として個人保証をした場合は、返済義務があるので注意が必要です。
残余財産分配請求権で分配を受けられる可能性も
自益権についての項目でも説明した通り、株主には「残余財産分配請求権」、つまり会社を清算する際に残った財産の分配を受けるという権利があります。ですから、株式を保有している会社が倒産した場合にも、精算時に分配を受けられる可能性があるのです。
とはいえ負債の方が多かったときには、株主への分配金はありません。
取締役などに就任している場合は注意が必要
株主が会社の取締役にも就任していた場合、当然取締役としての責任は負わなければなりません。しかし、それは株主としての責任ではありませんので、株主の個人財産がとられることはまずないといってよいでしょう。
しかし、個人事業主だといざという時に無限責任となってしまうことを回避する、つまり個人財産を守る目的で株式会社を設立し取引を行うことがありますが、株主の有限責任を悪用すると株主の責任が認められて、個人財産に影響を及ぼす場合もあるので気を付けましょう。
会社設立の際の株主に関する注意点
会社設立の際、株主の取得した株式数は重要な意味を持ちます。会社の根本を決める事項(定款の変更や合併など)、役員の人事に関わる事項(取締役、監査役、会計監査人の選解任など)、株主の利害に関わる事項(自己株式取得、剰余金の配当、取締役の報酬など)を決定する株主総会で、出席した株主の議決権の過半数賛成で決議できることがあるからです。
最後に、会社を設立する際の持株比率に関して注意すべきことを説明します。
1人法人の場合
1人法人として起業をし、持ち株比率が100%であれば、基本的には全てを自由に決定することができます。しかし会社の成長などに従い、複数の株主が株式を保有する形へと変化していくことも少なくありません。
その場合も、持ち株比率3分の2以上であれば、株主総会の特別決議を単独で行うことができます。持ち株比率が2分の1以上であれば、株主総会で議決権の過半数賛成で決議することができ、3分の1以上であれば、特別決議を単独で阻止することができます。
また、持ち株比率が大幅に減少しても、3%以上であれば株主総会の招集請求権や会計帳簿の閲覧及び謄写請求権を持つことができ、1%以上であれば、株主総会における議案提出権が得られます。
特別決議では定款の変更などの重要事項を決議します。持ち株比率100%を保ち続ける必要はありませんが、1人法人の場合には自身で株式を3分の2以上保有しておくことが望ましいといえます。
複数人で会社設立する場合
複数人で会社を設立する場合には、押さえておくべき持ち株比率の境目があるので注意が必要です。
株主総会において、出席した株主の議決権の過半数賛成で決議できることがあると述べました。、過半数=50%と考えている方が多いかもしれませんが、過半数とは50%を超えることを言います。代表者複数人で会社を設立する場合、例えば2人ならば出資金を半分ずつ負担し、保有する株式数も半分ずつにすることがあると思います。しかし、このような持ち株比率だと、2人の意見が異なったときに株主総会で決議することができなくなってしまいます。
3人以上の場合にも、持ち株比率の高い株主の意見が通りやすいのは変わりません。持ち株比率を間違えてしまうと、会社の意思決定や経営などに悪影響を与える可能性もあるので注意が必要です。
これを防ぐためにも最も権利のある人物を決め、その1人の保有する株式数を多くし、会社運営に支障をきたさないようにしましょう。また、将来的に会社が大きくなり、売却して利益を得ることなどがある場合にも、売却金が持ち株比率に比例することも意識しておくことをおすすめします。
まとめ
会社設立の際に注意したい株主の権利などについて理解できたでしょうか。
会社設立をしようと思うと、どうしてもビジネスプランで頭がいっぱいになりがちです。しかし、株主構成や持ち株比率は株主総会や会社経営において、非常に大きな影響力を持ちます。1人で設立する場合も、複数人で共同経営する場合も、しっかりと考えながら決めるようにしましょう。