会社設立

会社設立時に助成金や補助金の申請・利用が可能!違いを知って上手に使おう

会社を設立しようと考えた時に、手続きなどはもちろんですが、最も気になるのはお金のことですよね。自己資金だけで設立・運用資金をまかなえるケースは少ないと思います。
実は、会社設立時に利用できる助成金や補助金が多く存在するのはご存じでしょうか。これらは融資とは違い原則返済不要なのが大きなポイントです。
今回は、会社設立時に必ず知っておきたい助成金・補助金について説明していきます。

(注意事項:「補助金・助成金」の給付内容は毎年変更が生じる事が多いので、必ず管轄官庁のホームページ等で最新情報を確認してください。)

会社設立時の助成金・補助金とは?

会社設立の際、資金調達にはいくつかの方法があります。
1つは銀行などの金融機関から融資を受ける方法。融資とは借金のことなので、返済の義務があります。
これに対して、返済の義務がないのが助成金や補助金です。これらは国や地方自治体から支給されるお金で、条件を満たしていれば気軽に申請することができます。
助成金や補助金について、それぞれの違いを詳しくみていきましょう。

助成金とは

助成金は、会社規模の課題解決のために要件を満たしていれば誰でも受給できるお金で、基本的にはいつでも申請可能です。
「従業員が働きやすい環境を整備するため」の資金など、比較的少額なのが特徴として挙げられます。その分、「補助金に比べ比較的受け取りやすい」と言えます。

補助金とは

補助金は助成金とは異なりもっと大きな規模の課題解決のために用意されたもので、予算や採択人数に限りがあります。よって、要件を満たしていても申請が通らなければ受給することはできません。いつでも申請可能な助成金とは違い、応募時期も限定されていることがほとんどです。しかし、補助金は「日本の経済活動を活性化するため」に支給される資金なので、補助額が100万円から数千万円と高額であることもあります。

助成金や補助金を主催する団体は大きく4つ!

助成金や補助金は、申請する種類によって窓口が異なるので、手続きの際には注意が必要です。これらを主催する団体は、大きく以下の4つがあります。

厚生労働省

厚生労働省では、福祉や雇用促進、従業員の能力向上などを目的とした助成金を支給しています。

経済産業省

経済産業省では、地域経済振興、若者や女性の活躍支援、創業補助などを目的とした補助金を支給しています。

地方自治体

それぞれの自治体によって、様々な助成金・補助金を支給しています。内容や支給額、条件などは自治体によって異なりますので、どんな支援を受けられるか、自分が所属する地方自治体に確認してみましょう。

民間団体や企業

財団や企業でも、独自の補助金や助成金の制度を設けているところがあります。
ユニークなビジネスアイデアに対して支給するケースも多いので、具体的な案がある人はリサーチして、チャレンジするのも良いかもしれません。

会社設立時に申請できる代表的な助成金・補助金

助成金や補助金についてわかったところで、会社設立時に申請できる助成金・補助金には具体的にどのようなものがあるかを見ていきましょう。

助成金

会社設立時に申請できる助成金の代表として挙げられるのは、以下の2つです。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、厚生労働省が設けている助成金制度です。契約社員やパートタイマーのような非正規雇用労働者を正社員に登用したり、、キャリアアップのための職業訓練を受けさせたりして、労働意欲や能力を向上させ、優秀な人材確保を目的とした取り組みに対して助成される厚生労働省の制度です。
キャリアアップ助成金には大きく7つのコースがあり、「従業員1人につき〇万円」といった形で受け取ることができます。

厚生労働省のホームページ

トライアル雇用助成金

厚生労働省が設けている助成金制度で、ハローワークや人材紹介会社等の紹介により、職業経験が不足している・技能がない、など特定の求職者を事業所が短期間の試用期間(原則3カ月)を設けて雇用し、企業と求職者双方が適性を判断した後に両者の合意のもとで本採用が決まる制度です。
試用期間との大きな違いは、トライアル雇用には「試用期間には本採用義務があるとはいえない。(試用期間は本採用が前提)」、「助成金が支給される」という点が挙げられます。

厚生労働省のホームページ

補助金

続いて、補助金です。会社設立時に申請できる代表的な補助金には、以下の3つがあります。

小規模事業者持続化補助金

中小企業庁が実施する「小規模事業者支援パッケージ事業」の一つで、小規模事業者の事業継承・働き方改革・人材不足・販路拡大などを目的とした補助金です。ベンチャー企業や個人事業主などの小規模事業者が、販路拡大や生産性向上を図る際に支給されます。取り組みに使用した額の3分の2、最大50万円までを受給できます。補助金は店内の改装や商品開発、チラシの作成やホームページ、WEB広告の運用など、様々なことに利用可能です。

この補助金を申請する際には、商工会議所に経営計画書を提出する必要があります。経営計画書を書くのは大変ですが、作成方法は、窓口でも教えてもらうことができます。

中小企業庁のホームページ

創業補助金(地域創造的企業補助金)

起業する際に必要な資金の一部の補助を受けることができる補助金です。創業補助金は自ら創業社長になる場合に利用できますが「新たに従業員を1名以上雇い入れる」等の条件があるので注意が必要です。

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助事業として実施する『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金』の略称です。中小企業や小規模事業者による試作品開発や革新的サービスの開発、あるいは生産プロセスの改善や提供方式の導入といった、経営革新のための設備投資などに交付される補助金です。
一般型でも最大で1,000万円の補助金を受け取れる、中小企業を強力にサポートする補助金です。しかし、その採択率は4割程度であり、補助金事業としての適格性も求められます。

申請方法は電子申請です。システム利用の際には「GビズIDプライムアカウント」を取得する必要があるので、受給を検討するのであれば早めにこのアカウントを取得しましょう。アカウント取得などの手続きは、ものづくり補助金総合サイトから可能です。

その他

代表的な助成金・補助金以外にも会社設立の際には、以下のようなものも申請することができます。

地域中小企業応援ファンド【スタート・アップ応援型】

地域中小企業応援ファンドは、ベンチャー企業や中小企業のスタートアップを応援するための助成金です。地域の特産品や観光客の獲得に関わる事業など、地域コミュニティへの貢献度が高い取り組みに支給されます。
こちらは各都道府県のファンドごとに申請方法や支給額が異なるので、自分の所属するところに確認してみましょう。

ホームページ作成支援事業補助金

こちらは東京都港区限定ですが、商工団体や中小企業等がホームページを新たに作成場合に利用できる補助金です。費用の半額(商工団体は50万円まで、中小企業は10万円まで)が支給されます。

自治体が行っている助成金・補助金は他にも多くありますので、ぜひ会社設立時には自分の地域で利用できるものがないか、チェックしてみてください。

助成金や補助金を利用するメリット・デメリット

会社設立時に利用できる助成金や補助金には多くの種類があることがわかりましたが、利用のメリット・デメリットは何でしょうか。

メリット

助成金や補助金を利用する最大のメリットは、返済の必要がないこと。前述の通り、銀行から「借りる」形となる融資とは異なり、支給されるものですので、返さなくて良いのはありがたいですね。
助成金の場合、補助金より少額とはいえ要件を満たしていれば申請・受給できるのも魅力の1つ。また、自分の事業に合った制度がある場合には、自己資金にゆとりがなくても様々なことにチャレンジできるのは大きなメリットだと言えます。

デメリット

助成金や補助金に応募する際には、事業計画書や収支計画書など、たくさんの書類を用意する必要があります。要件を満たすよう作成するため、時間と手間が多くかかることを理解しておきましょう。
場合によっては専門家に依頼し、コストがかかることもあります。更に補助金は、手間やコストをかけても採択されなければ受給することができませんので、「落ちる覚悟」を持って申請に取り組むことも忘れてはいけません。

また、新たな事業を始めるために受給した場合は、その事業を簡単にやめることができませんし、受給後数年間は売上報告が必要なケースもあるため、やや面倒なことが起こる可能性があることも覚悟しておきましょう。

助成金・補助金を利用する際の注意点

最後に、助成金や補助金を利用する際の注意点について、解説します。

条件が良いものは倍率が高い

当然ですが、条件の良い助成金や補助金には応募が殺到します。過去には約1ケ月間の公募期間で3000件近くの応募があり、採択されたのはたった136件だったという例もあります。
応募しても不採択となるケースも多いので、助成金・補助金ありきで事業計画を考えるのは危険だと言えます。

必要書類の準備が大変

応募の際にはたくさんの書類を準備する必要があり、通常の業務にプラスして時間と手間がかかります。
特に補助金の場合は、書類を用意しても採択されない可能性が高いことも覚悟しておきましょう。

自己資金0円では利用不可

特に注意が必要なのは「必要なお金を使った後でないと支給されない」という点です。
使ったお金の一部が後日支給されるものなので、自己資金が0で、補助金・助成金をもらってビジネスを開始するということはできません。あくまでも自己資金の不足を補うためのものであり、実際に使った経費に対して支給されます。

複数受給は難しい

応募のタイミングによっては複数の助成金・補助金の申請を同時進行できますが、実際に受給する際には複数のものは受け取れない場合が多いです。
(ただし、複数の助成金・補助金を併用できる場合もありますので、それぞれの「公募要領」も必ずチェックしましょう。)
特に政府系の助成金・補助金には厳格なルールがありますので、受給の際には気を付けてください。
専門家は、助成金や補助金の申請方法や条件、申請書の書き方についてのアドバイスなどを行っていますので、そういった人にアドバイスをもらうと間違いがないでしょう。

課税対象となるので申告が必要

返済が不要な、助成金・補助金ですが、課税所得のため、確定申告などの際には当然申告が必要です、助成金・補助金の種類によって課税関係が異なるので、それぞれの取り扱いを確認しておきましょう。

※課税所得とは、所得税の課税対象となる個人所得のことであり、法人税には使いません。

まとめ

会社設立の際に必要な資金として、返済の必要がなく利用できる助成金・補助金をぜひ利用したいものです。
助成金・補助金にはさまざまなメリットがありますが、一方で申請書類作成の労力、採択率の問題など、考慮しなければならないポイントもいくつかありました。
申請条件や方法などをしっかりと調べ、理解し、会社設立の際に上手に活用して事業に役立てていきましょう。

(注意事項:「補助金・助成金」の給付内容は毎年変更が生じる事が多いので、必ず管轄官庁のホームページ等で最新情報を確認してください。)