会社設立後の消費税課税は2年間免除できる!免税期間を引き延ばす条件とは
会社設立後の様々な費用の中の1つに消費税がありますが、実は消費税は2年間免除することができるのをご存じでしょうか?
今回は、免税期間を引き延ばすための条件や対策について解説していきます。課税対象にならない会社もありますので、設立時の参考にしてみてください。
消費税の支払いは2年間免除を受けられる
会社設立後の消費税の支払いは2年間免除を受けることができます。免除となる条件についてご紹介していきますが、その前に会社が納める消費税に関する法律などを確認しましょう
法人は消費税を納める義務がある
国税庁のホームページによると、消費税は「商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します」とあります。この消費税は消費税法第五条で「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある」と定められています。
会社を設立すると、この法律に基づき、消費税を納める義務が課せられることになります。
納税義務は最長2年間免除
消費税支払いの義務は、会社設立をした場合避けることはできませんが、設立後最長2年間は消費税の免除を受けることができます。
「消費税を払わなくてよいのはありがたい!」と思われるかもしれませんが、納税義務の免除は条件を満たした会社にのみ適用されますので、注意が必要です。消費税免除の条件は1年目・2年目で異なりますので、1つずつ見ていきましょう。
会社設立初年の消費税が免除となる条件
会社設立初年の消費税免除を受けるには、資本金が1,000万円未満でなければなりません。これだけで設立初年(1期目)の消費税が免除になるので、会社設立を検討している方はぜひ消費税のことも考慮しながら資本金を決定してください。
2期目の消費税が免除となる条件
実は、平成25年までは資本金1,000万円未満であれば、消費税は2年間免除されていました。しかし、平成23年の消費税法の改正(平成25年の施行)により、資本金1,000万円未満の会社の消費税免除は1期目のみとなりました。
ただし、資本金1,000万円未満に加え、次の3つのうちいずれかの条件を満たしていれば、2期目も消費税を免除され、最大2年間の消費税免除を受けることができます。
①1期目上半期の課税売上高が1000万円以下
会社設立1期目上半期(特定期間)、つまり会社を設立した初年度の前半6か月間の課税売上高が1,000万円以下の場合、2期目の消費税も免除になります。
②1期目上半期の給与等支払総額が1000万円以下
①と同じ会社設立1期目の上半期(特定期間)に、支払った給与や賞与などの支払総額が1,000万円以下であれば消費税の免除を受けられます。課税売上高が1,000万円を超えてしまった場合も、給与支払総額を調整することで、免除を受けることができます。
③設立1期目が7か月以下
①②の条件をクリアできないような事業規模の会社を設立する予定の方は、消費税の免除を諦めてしまうかもしれません。しかし、会社設立の時期を考えることで、消費税の免除が受けられる場合もあります。
会社設立の1期目が7か月以下の場合、2年目の消費税支払いの有無を判断する「特定期間(1期上半期)」が存在しないことになります。よって課税売上高や給与等支払総額が1,000万円を超えていても、2期分の消費税免除を受けられます。ただし、この場合は2年間ではなく、最大1年7か月の免除となります。
設立時点である程度の収益を見込んでいる会社も、法人設立日と決算日の設定を考慮するだけで、消費税免除の対象になれる可能性があることを覚えておきましょう。
注意!こんな会社は2年以内でも課税対象
会社設立後、条件を満たせば最長2年間の消費税免除が受けられると言いましたが、設立2年以内でも消費税の課税対象となる会社(法人)もあります。
課税対象になるのは以下のような会社です。
前述の条件を満たしていない
消費税の免除対象は、前述の条件をクリアしている場合に限ります。
- 資本金が1,000万円以上
- 特定期間の課税売上高が1,000万円以上
- 特定期間の給与等支給額が1,000万円以上
- 上記を満たしていないが設立1期目が7か月以下
など、条件に満たない会社は消費税の支払い義務が発生します。
大会社のグループ企業が出資
出資しているのが大会社のグループ企業である場合、その会社は特定新規設立法人というくくりとなり、条件を満たしていても設立初年から課税事業者となります。
特定資金設立法人に認定される基準は、非常に複雑ですので、大会社などから出資を受ける場合には、事前に司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
免税期間を引き延ばすための対策は?
条件を満たせば、会社設立後2年間は消費税の免税を受けられることがわかりましたが、免税期間を最長に引き延ばすためには、、どのような対策を行えばよいのでしょうか。
資本金に対する対策
期首時点での資本金が1,000万円未満であることがその事業年度で消費税の課税を免れるための必要条件です。ここでいう資本金には、借入金や資本準備金などは含まれません。ですから、自己資産が1,500万円あっても999万円までを資本金とし、残りの501万円(もしくはそれ以上の額)は借入金とすることで、「資本金1,000万円未満」という条件を満たすことが可能です。
また、もし増資をしたいのであれば、会社設立後2期目の期首時点を過ぎたあとに実施することで、消費税の課税対象となるタイミングを1年間遅らせることができます。
課税対象となる売上高の対策
「特定期間の売上高を1,000万円以下に抑える」ことで消費税免税の対象となります。しかし、会社を設立したからには、経営者は売上の右肩上がりを目指すのは当然。売上を調整する、というのはなかなか難しいことです。
課税対象となる売上高に関する対策としては、キャンペーンやセールなど、売上の大幅な増加を狙えるような施策を下半期に実施することなどが挙げられます。また、業種によって繁忙期は異なりますが、例えば12月の売上増が見込まれるような業種であれば、特定期間に12月を含めないよう設定するのも1つの方法です。
給与等支払の対策
特定期間の売上高を調整するよりも、給与等支払総額を1,000万円以下に抑えて対策をする方が現実的かもしれません。ちなみにこの場合の給与支払額は、実際に支払った分を指します。
月末締め、翌月払い
給与の支払いを、「月末締翌月払い」とすることで、1月目から6月目までの給与として、実質は5か月分の給与のみ計算額に入れる。
給与の一部を下期の賞与にまわす
賞与も給与の計算に含まれますが、下期にまわすことで、計算額から外れます。
業務委託の活用
業務委託は給与ではなく外注費としての支払いになります。設立してしばらくは、出来るだけ社員を雇わず業務委託を活用する。
などの方法を取り入れることで給与等の支払額を抑えることができます。
実は設立2年目から消費税を納めた方がよい場合も…
会社は、消費者から受け取った消費税を納付しますが、高額な設備投資や大きな仕入れ等、初期投資が多額だった場合、受け取った消費税よりも支払った消費税の方が多いということもあります。支払った消費税の方が多ければ当然、差額は還付してもらうことができるので、消費税の免税事業者になるよりも、消費税を納税する方を選択し、還付金を受け取った方が有利になることも。
2年間消費税支払いの免除を受けるか、2年目から消費税を支払い還付を受けるか。どちらが会社にとって損がないかについては、税理士などの専門家の知見を交えながら計算することをおすすめします。特定期間の売上高を調整するよりも、給与等支払総額を1,000万円以下に抑えて対策をする方が現実的かもしれません。ちなみにこの場合の給与支払額は、実際に支払った分を指します。
まとめ
会社を設立すると避けられない支払いの1つ、消費税ですが、条件を満たせば設立初年、そして2年目まで消費税を免除することができます。起業して2年間の消費税免除は大きな意味があります。資本金の金額や設立日、給与の締め日や賞与等々、納付の時期になって後悔しても修正の利かないことなども多いので、会社設立の手続き前からしっかりしたシミュレーションが大切です。上手な節税対策の為にも、専門家への相談をおすすめします。