会社設立時に加入必須の社会保険とは?手続きの方法やルールを解説
会社を設立したら必ず加入しなければならないのが社会保険。よく耳にするワードですが、具体的な社会保険の内容や手続きの方法についてはご存じでしょうか?
加入必須、とありますが加入しない、手続きを怠った場合にはどのようなペナルティがあるのか。
この記事では、社会保険に関する詳しい解説、また手続きの方法やよくある社会保険の疑問についてもアドバイスをしていきます。
会社設立の際に加入必須の社会保険
まずは会社設立をしたら加入必須の社会保険の内容について解説していきます。
社会保険とは
会社で雇っている社員やアルバイトなどが加入する5つの保険のことを、社会保険といいます。
加入申請場所 | 期限 | 注意点など | |
---|---|---|---|
健康保険/厚生年金保険 | 年金事務所 | 会社設立後5日以内 | 期限が最も短いので会社設立後すぐの申請がおすすめ |
労災保険 | 労働基準監督署 | 従業員を雇用した翌日から10日以内 | 保険関係成立後、都道府県労働局への申請も必要 |
雇用保険 | ハローワーク (公共職業安定所) |
事業開始翌日から10日以内 | 実際に従業員を雇用した場合、別の届け出も必要 |
介護保険 | 年金事務所 | 健康保険と共に申請 | 40歳以上の従業員は加入必須 |
それぞれの保険は加入の申請場所や必要書類、提出期限などが異なります。書類も少なくありませんので、申請漏れのないよう用意をする必要があります。
社会保険の申請方法や必要書類については後述しますが、その前に
各保険について詳しく見ていきましょう。
健康保険
健康保険は、病気やケガで病院にかかった際に、診察・治療代の一部を負担してくれる保険です。個人事業主や無職の方などは国民健康保険に加入しますが、法人の場合はこの健康保険に加入をします。ちなみに、公務員は共済組合に加入できます。
健康保険への加入は、会社設立後5日以内に年金事務所へ行き手続きを行います。厚生年金も同様の場所・期限なので併せて加入の申請を行うようにしてください。
厚生年金保険
厚生年金保険は、基礎年金である国民年金に上乗せして、会社員が加入することのできる年金です。以前は会社員は厚生年金・公務員は共済年金と分かれていたのですが、2015年より統合され、厚生年金のみになっています。
ちなみに会社員・公務員時代に厚生年金保険をいくら支払ったかにより、受給できる年金額も変わってきます。
労災保険
通勤中や就業時間内に、従業員事故が事故や災害に遭ってしまったら…。不慮の負傷・病気・死亡などへの保険給付を行ってくれるのが、労災保険です。会社への保障というより、働く人達を守るための要素が強くなっています。
労災保険は例外を除いて、原則経営者の加入はできません。また、正社員だけでなく、アルバイトやパートを1人でも雇うと加入義務が発生するので、申請を忘れないよう注意してください。
雇用保険
労働者が職を失った場合、再就職までの間の生活の安定などのために必要な給付を行うのが雇用保険です。1週間の所定労働時間20時間以上、かつ6か月以上引き続いて雇用される見込みのある従業員を雇う場合には、業種・規模に関わらず雇用保険の加入が義務付けられています。
雇用保険も労災保険同様、一部の例外を除いては、経営者の加入はできません。
※介護保険(40歳以上)
- 40歳以上65歳未満のうち、特定疾患で要介護認定を受けた人
- 65歳以上で要介護・要支援認定を受けた人
が、最大9割の介護費用を負担してもらえる保険です。満40歳以上の従業員は介護保険にも加入義務があります。会社設立時の役員の中に40歳以上の人がいる場合には、健康保険・厚生年金保険と共に申請するようにしましょう。
会社設立時の社会保険加入は義務!
会社を設立したら加入必須の、5種類の社会保険について説明しました。何度も言いますが、社会保険加入は加入必須。これは健康保険法第3条、厚生年金保険法第9条など、法律でもしっかりと定められている義務ですので、申請漏れのないよう入念に準備・確認をする必要があります。
1人法人も加入義務あり
前述の通り労災保険や雇用保険については、一部を除き経営者は加入しなくても問題ありません。経営者が40歳未満の場合、介護保険についても40歳になるまでは未加入で良いです。
しかし、健康保険・厚生年金保険については1人法人であっても加入義務がありますので、会社設立時の諸々の手続きと共に、年金事務所に書類の提出を行い、定められた保険料を支払うようにしましょう。
加入しなくてもよい例外のケースとは?
加入が必須、法律で定められた義務、といっても、実は健康保険・厚生年金保険も加入をしなくてもよい場合、例外というものがあります。
社会保険に加入しなくても良い例外のケースには、
- 役員報酬ゼロ
- 報酬はあるが非常に低い
などがあります。毎月の役員報酬が最低12,000円以上はないと、社会保険の加入は厳しく、報酬がこれ以下である場合には加入を断られてしまうこともあるのです。
報酬面の理由で健康保険・厚生年金保険への加入が叶わない場合には、国民健康保険・国民年金に加入します。
ちなみに、逆のケースとして労災保険に加入ができる例外についてもご紹介します。前述の通り、基本的に経営者は加入できない労災保険ですが、個人タクシーや1人で行っている大工関係の仕事などは、特別に加入することができます。
ただし、労災保険の受給ができるのは、運転中や作業中に起こった業務労災のみ。経営業務中の事故・災害については補償されませんので覚えておきましょう。
社会保険に加入しないと……
加入必須、加入は義務だと言われる社会保険ですが、加入しなかった場合、一体どのようなことが起こるのでしょうか。
会社設立を行った大小さまざまな企業が健康保険・厚生年金保険に加入しているかどうかについては、年金事務所が徹底的に調査を行います。「1人法人のこんな小さな会社だからバレることはない」などということはなく、年金事務所から加入要請が届きます。電話がかかってくる場合もありますし、文書で要請がくることもありますが、この時点ですぐに加入の手続きを行えば、その日以降からの保険料を納めるだけで済むので、すぐに手続きに向かいましょう。
放置は絶対NG!
年金事務所からの加入要請に応じないと、立入検査の警告文書が届きます。本来であれば警告文書が来る前に加入をすべきですが、まだこの段階でもすぐに手続きに向かえばそれ以降の保険料を納付するに留まります。
しかし、この警告文書も放置を続ければ、実際に立入検査が行われ、社会保険への強制加入をさせられます。そして、最大2年間までさかのぼり、保険料の納付を求められるので、信用の面だけでなく、金銭面でのダメージも大きくなります。
更に健康保険法などの違反で該当する部分があると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられることもあります。社会保険はすぐに加入すること、万一忘れてしまっていた場合にも加入要請がきたらすぐに応じることを忘れないようにしてください。
社会保険は会社設立時のその他の手続きと一緒に準備しよう
必ずやらなければならないとわかっていても、後回しの作業にすると忘れてしまう、ということは誰しもあります。社会保険の手続きについては、会社設立時に必要なさまざまな手続き・申請と共に準備、提出をするようにしましょう。
会社設立時は様々な書類の作成、提出が求められるため、本業と並行していてはなかなか準備が進まない、漏れがないか心配だ、ということもあるでしょう。そのような場合には、司法書士、社会保険労務士など会社設立に関する専門家に手続きを手伝ってもらう、代行してもらうことも可能です。
全て1人で行うのも勉強のためにはもちろん良いことですが、抱え込んで失敗しないためにも、専門家を賢く使ってみるのも良いかもしれません。
加入対象となる従業員はどんな人?
社会保険の加入対象となる従業員をまとめると、以下のようになります。
各種保険 | 加入対象者 |
---|---|
健康保険 | 加入対象者 |
厚生年金 | |
労災保険 | 経営者を除く従業員(例外あり) |
雇用保険 | |
介護保険 | 経営者を含む満40歳以上の全従業員 |
前述の通り、健康保険・厚生年金保険は経営者も加入義務がありますので、1人法人の方も忘れずに手続きを行いましょう。40歳以上の場合は介護保険への加入手続きも同時に行うようにしてください。
労災保険・雇用保険については経営者は原則加入ができませんので、1人法人、従業員が加入の条件に満たない場合には手続きは必要ありません。
社会保険加入に必要な書類
社会保険加入に必要な書類にはどのようなものがあるのか、確認しましょう。
健康保険・厚生年金保険に必要な書類と手続き
健康保険・厚生年金保険(+介護保険)の加入申請は、年金事務所で行います。前述の通り、会社設立から5日以内に必要書類を提出しなければなりませんので、事前に準備をし、登記が完了したらその足で年金事務所へ行く、というくらいの心持でいた方が良いと思います。
加入の際に提出する書類・添付書類は以下の通りです。
- 新規適用届
- 新規適用事務所状況書
- 被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者異動届
- 国民年金第3号被保険者の届出
- 会社の登記簿謄本
- 保険料口座振替依頼書
- 事務所賃貸借契約書(写し)
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 源泉所得税の領収書
- 出勤簿やタイムカード など
労災保険に必要な書類と手続き
労災保険に関する「保険関係成立届」は、会社の登記簿謄本や労働者名簿などと共に、労働基準監督署に提出します。提出期限は、従業員を雇用した日の翌日から10日以内です。また、添付書類として、
- 会社の登記簿謄本
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
なども必要となります。従業員を10名以上雇う場合には「就業規則届」というものも提出しなければならないので、注意してください。
また、これが成立したのちには50日以内に都道府県労働局に、労働保険概算保険料申告書を提出し、納付をしなければならないので併せて覚えておきましょう。
雇用保険に必要な書類と手続き
雇用保険に関する手続きは、ハローワーク(公共職業安定所)で行います。雇用保険適用事業所設置届は、事業開始の翌日から10日以内に提出しなければなりませんので、従業員を雇う予定がある場合には、会社設立の手続きと同時に済ませてしまいましょう。この際、
- 会社の登記簿謄本
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
- 労働保険関係成立届の控え
なども必要になりますので、準備するようにしてください。また、実際に従業員を雇用したら、翌月10日までに雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに提出します。こちらも忘れないよう、早めの提出を心がけましょう。
これってどうするの?社会保険に関する疑問を解決!
社会保険は加入義務があることはおわかり頂けたと思いますが、使える場面や従業員の採用・退職などについてなど、非常に多くの疑問点があるかと思います。最後に、社会保険に関するよくある疑問についてお答えしていきます。
社会保険加入要請や警告文が届いたとき
社会保険加入要請や警告文が届く、というのは設立した会社が社会保険未加入だという証拠です。早急に加入の手続きを行い、社会保険料を支払いましょう。
前述の通り加入要請に応じなければ立入検査が実施されたり、最悪の場合罰金や懲役を課せられたりすることもありますので、放置はしないようにしてください。
加入要請にどのように対処して良いかわからない、という時には近くの司法書士など専門家に相談しましょう。
社会保険加入義務のある従業員を採用した場合
新たに社会保険加入義務のある従業員を採用した場合には、加入の手続きを行います。手続きの前には、従業員に子どもや扶養している親、要件を満たす配偶者など被扶養者の有無を確認してください。いる場合には、こちらも併せて届け出を行います。
新たな社会保険の加入についても、年金事務所に申請します。「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出してください。
その後、会社宛てに健康保険証が届きます。扶養家族がいる場合には家族分も一緒に届きますので、従業員に渡すようにしましょう。
また、労災保険は雇用から10日以内、雇用保険は翌月10日までと、こちらも手続きが必要になります。大切な従業員を守る保険ですので、忘れないように手続きを行いましょう。
社会保険に加入していた従業員が退職した場合
新たな従業員を迎えることもあれば、これまで雇っていた人が辞めることももちろんあるでしょう。社会保険に加入していた従業員が退職する場合には、本人のもの、また扶養家族のものも一緒に健康保険証を預かります。社員証や会社の携帯電話などもあれば、一緒に回収しましょう。手渡しで受け取れない場合には、郵送にて返却してもらうようにしてください。
健康保険証と共に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出することで、脱退手続きは完了します。手続きは退職日から5日以内です。また、退職した翌日から10日以内にハローワークへいき、雇用保険被保険者喪失届を提出します。
退職者には源泉徴収票と雇用保険資格喪失証、希望の場合には離職票も渡す必要があるので、期日までにしっかりと手続きを終えるようにしてください。
社会保険はどんな時に使える?
社会保険は生活の中のさまざまなシーンで活用されます。例えば、
- 健康保険:けがや病気で病院にかかるとき
- 厚生年金保険:老後働けなくなったときの生活を保障
- 労災保険:通勤時や業務中の怪我、死亡などに対する補償
- 雇用保険:失業時の生活など金銭面の補助
- 介護保険:要介護時の費用を負担してくれる
などそれぞれにしっかりと役割があります。社会保険は働く人本人のみならず、その家族をも守ってくれる貴重な保険だといえます。
まとめ
今回は会社設立時に加入必須の社会保険について解説しました!1人法人でも法律で加入が義務付けられている健康保険・厚生年金保険は加入しないと立入検査などが実施され、罰金などもあるので必ず忘れないように手続きを行いましょう。また、必要に応じて労災保険・雇用保険・介護保険にも忘れず加入するようにしてください。
会社設立時には手続きも多いので、漏れがないよう司法書士などの専門家に依頼する方も少なくありません。社会保険の詳しい内容や、加入手続きについてわからない場合には、自分で調べることも大切ですが、専門家の話もぜひ聞いてみてください。
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