会社設立するなら合同会社がいい? 選ばれる理由やメリット・デメリットを解説
会社を設立する際に選ぶ会社形態として、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4つがありますが、最近では、「合同会社」を選択するケースが増える傾向にあります。実はあの有名な外資系企業も合同会社の形態をとって日本への進出をしていたり・・。なぜ今、合同会社が選ばれているのか?メリット・デメリットを解説するとともに、その理由を探っていきましょう。
合同会社とは
合同会社は、2006年5月施行の新会社法によって設立が認められるようになった新たな会社形態で、経営者と出資者が同一で、出資者全員が有限責任社員であることが特徴です。LLC(Limited Liability Company)と称される事もあります。「アマゾンジャパン」「アップルジャパン」や、「西友」などの有名企業が合同会社である事が最近知られて来ているようです。近年は、合同会社の形態をとる法人設立が増加傾向となっており、会社設立件数の20%前後を占める割合となってきています。
合同会社と株式会社の違いと共通点
株式会社と違う点、共通する点は次の通りです。
株式会社と合同会社の違い
株式会社と合同会社は、主に「会社組織のあり方」と「経営・出資の関係」に違いがあります。株式会社は「所有と経営の分離」という考えに基づき、出資者である株主は会社の経営には携わりません。一方、合同会社は持分会社とも呼ばれ、「出資者全員が社員」であり、経営者が必ず出資者である、という大きな特徴があり、株式会社と大きく違う点となっています。
また、株式会社が株主総会の開催や決算公告、株主間の利害調整などが必要であるのに対し、合同会社は会社の意思決定や利益の配分を出資比率によらず、自由に決めることができます。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
所有と経営 | 原則完全分離 | 原則同一 |
出資者名称 | 株主総会 | 社員 |
最高意思決定機関 | 株主 | 社員(出資者)総会 |
代表者の名称 | 代表取締役 | 代表社員 |
経営者(業務執行機関) | 取締役会・取締役 | 出資者 |
取締役任期 | 最長10年 | 任期無し |
利益・権限の配分 | 出資額に比例 | 出資額に関係なく自由に決める |
決算公告 | 必要 | 不要 |
上場 | 可能 | 不可 |
資金調達 | 株式発行による | 融資・社債発行による |
株式会社と合同会社に見られる共通点
いっぽう、株式会社と合同会社にも共通点と言えるものがあります。
どちらも有限責任
株式会社、合同会社の出資者は、会社の設立時に資本金などの形で出資したお金については、会社が倒産したときには返ってこなくなりますが、それ以上の損失を負う事はありません。
税負担が同様
合同会社の場合も、株式会社と同様に設立法人の恩恵を受けられます。個人事業主に比べれば、税金面で有利となります。
合同会社にした場合のメリット
近年、設立件数が増加傾向にある合同会社。会社を設立するにあたり合同会社の形態を選んだ場合、前項の説明の通り、株式会社と比較して手続きが簡便、手間が掛かりにくい、自由度が高い等の特徴がありました。具体的に、合同会社にどのようなメリットがあるのかみていきましょう。
設立・運用コストを低く抑えることができる
合同会社は、会社設立時に定款の公証人による認証手続きが不要です。また、登録免許税も株式会社の「資本金の0.7%または15万円のうち低い方」に比較して、合同会社は0.7% or6万円のみです。
この設立時のコストが低く抑えられるというのは、大きなメリットの一つです。
加えて、合同会社は決算公告や役員変更の際のコスト等、その後の会社運営時のランニングコストも、株式会社と比較して低く抑えることができます。
株式会社 | コスト | 合同会社 | コスト | |
---|---|---|---|---|
法人登記申請 | 定款印紙代 4万円 定款認証手数料 5万円 登録免許税 15万円〜 定款謄本代 約2千円 |
24万2,000円 | 定款印紙代 4万円 定款認証手数料 0円 登録免許税 6万円 定款謄本代 約2千円 |
10万2,000円 |
決算公告 | 義務有り | 1万円前後(電子公告の場合) | 義務無し | 0円 |
役員 | 最長10年 | 変更登記に約1~3万円 | 任期無し | 0円 |
経営の設計の自由度が高い
合同会社は、株式会社のように取締役会の設置義務がありません。出資者全員が社員となりますのが、会社法に則り、定款に出資者それぞれの職務内容を定めることによって事業運営に必要な組織を自由に設計することができます。
利益の分配を自由に決められる。
株式会社の場合は、原則、出資者の出資金額に応じて利益の分配を行うことになりますが、合同会社の場合は利益の分配を自由に行うことができます。そのため、例えば家族経営において出資額の多寡ではなく、会社への貢献度等での評価結果を利益の分配に反映したりすることなどが可能です。
意思決定のスピードアップ及び経営の効率化を図りやすい
合同会社は、出資した社員全員に代表権があり、少人数の出資者が自ら経営を行うことが前提の組織のため、取引先との契約において社員それぞれが迅速かつ柔軟な対応を取り、経営の効率化を図る事などができます。
合同会社にした場合のデメリット
上記の様にメリットの多い合同会社ですか、デメリットもきちんと抑えておく必要があります。会社設立後の取引先や、自社を構成する業務やメンバーの特性などを想定し、デメリットがそれらに与える影響を考慮しておきましょう。
信用度・認知度が低め
合同会社は比較的新しい会社形態なので、どういった性質のものか社会にあまり浸透しておらず、未だ「代表社員」という肩書きもあまり認知されていないと言える為、取引検討中の相手先へ説明するシーンが都度発生する可能性があります。また、合同会社は出資者と会社が分離しているわけではないので、企業間の新規取引において株式会社と比較すると合同会社の方が不利になってしまう場合があります。
社員間の対立が経営に影響を及ぼしやすい
メリットにでもある、出資者と経営者(業務執行者)が同一であること、また、利益の分配を自由に決められること、が半面むしろそれ故に、もし社員間で対立が起きた場合には、経営に大きな悪影響を及ぼしやすいとも言えます。
合同会社を設立する際に、定款で社員(=出資するだけ)のうち業務執行社員(=出資し、業務をする社員)を限定する定めを盛り込むことによって、誰が代表権を持つのかを明確にしておく事もできますので、複数の他人が資金やノウハウを持ち寄って合同会社を設立する場合などは定款の記載内容をよく検討しておきましょう。
証券取引所での上場ができない
合同会社の場合には、そもそも株式の概念が存在しないため、証券取引所での上場はできません。故に株式会社の様に多くの人に株式を発行して多額の資金を集める事ができません。
将来上場を見越して会社設立をする場合、合同会社から株式会社に組織変更することも可能ですが、組織変更の際には「異議に対する手続きがあります。」「債権保護の手続きで最低元1ヶ月の期間が必要となる」ので注意が必要です。
合同会社が選ばれる理由
ここまでみてきた通り、合同会社は会社設立時の費用やランニングコストを株式会社を設立する場合よりも低く抑えられる上に、個人事業主よりは融資を受けやすく、利益配分や組織の運営設計の自由度が高いため、
- 起業家同士が連携して合弁事業(ジョイントベンチャー)の立ち上げ
- 商店街活性化のために小規模商店が集まって行う事業
- 身近な人同士相談をしやすい家族経営の会社
など、経営者達のスピーディーな意思決定によって事業拡大やアイデアの具現化の効率化を図りたい比較的小規模な組織が合同会社を選ぶ事が増えているようです。
また、「合同会社のデメリット」で説明した通り、社会にあまり認知されていない会社形態が取引に不利になってしまう可能性があるものの、取引先が特に企業ではない事業を行う場合は会社形態の認知度は問われにくいとも言えます。例えば、一般消費者との取引中心の業態、不動産投資を会社で行う場合、などにも、株式会社の形態ではなく合同会社が選ばれる傾向にあるようです。
まとめ
「合同会社」について、株式会社との違いや、メリット・デメリットはわかりましたか。比較的新しい会社形態のため、あまり広く認知されていないと思われるものの、株式会社のように複雑な申請や取り決めも少なく済み、設立・運営コストを抑えながら、自由に組織経営を設計できる利点を活かして事業経営の効率化を図るには「合同会社設立」が良い選択の一つとなることでしょう。「合同会社」も含めて、自分や経営パートナーとともに、自分たちの事業の性質や目指す組織の姿に一番合う会社形態を、じっくり比較検討してみてくださいね。