会社の本店所在地の決め方
会社を設立する際、必ず必要となるのが「本店所在地」と「本店所在場所」です。 会社法では「本店所在地」と「本店所在場所」を明確に区別しており、 「本店所在地」とは・・・最小行政区画である市区町村までの記載のもの 「本店所在場所」とは・・住所すべて となります。 定款に記載しなければならないのは「本店所在地」(会社法第27第3号)、 登記しなければならないのは「本店所在場所」(会社法第911条第3項第3号) となります。
本店の所在地はどこにしたらいいの?
これについては、特に制限はありません。
一般的には、事業をおこなう事務所や店舗の住所にします。
自宅の住所を本店の所在地とすることもあります。
ただし、特に賃貸のマンションやアパートなどを会社の本店所在地として考えている場合には、
物件によっては、会社の事務所としての使用を認めていない場合があるため、
事前に大家さんの了承を取っておくか、賃貸借契約書の内容を確認しておく必要があります。
また、登記上の本店所在地と実際に事業をおこなっている場所が同じである必要はありません。
(たとえば、登記上は自宅の住所を会社の本店所在地としているけれども、
会社の事業活動は、自宅とは別の賃貸事務所でおこなっているというケースもあります。)
定款上の「本店の所在地」の記載方法は?
(1)「独立の最小行政区画」までの記載にとどめておく方法 (2)具体的な番地まで記載する方法
「独立の最小行政区画」までの記載とは、政令指定都市の場合には、「〇〇県△△市」まで 記載することをいいます。(例:「神奈川県横浜市」) (東京23区(特別区)の場合には、「東京都〇〇区」までの記載のことをいいます。) 例えば、本店の住所が「東京都新宿区○○町1丁目2番3号」の場合の定款の記載方法を考えてみましょう。 定款の記載例(1)〔独立の最小行政区画までの記載の場合〕 (本店の所在地) 第2条 当会社は、本店を東京都新宿区に置く。 定款の記載例(2)〔具体的な番地まで記載する場合〕 (本店の所在地) 第2条 当会社は、本店を東京都新宿区〇〇町一丁目2番3号に置く。
「定款の記載例」としては、上記の2つの記載方法が考えられます。
では、どちらの記載方法にした方がよいのでしょうか。
一般的には、将来、本店移転の可能性がある場合には、「記載例(1)」のように、
独立の最小行政区画までの記載方法にしておいた方がよいでしょう。
市区町村までの記載にしておけば、将来、本店移転をしたとしても、
同じ市区町村内での本店移転であれば、定款変更の手続きをしなくても済むからです。
上記の事例で言えば、【定款の記載例(1)】の記載方法であれば、
東京都新宿区内での本店移転であれば定款変更の手続きは不要で
あるということになります。
一方、定款上に番地まで記載されている場合には、同じ市区町村内での本店移転であっても
定款変更の手続きが必要になり、その結果、登記費用等の諸費用が余分にかかってしまいます。
登記申請書上の「本店」の記載方法は?
「会社設立の登記申請書にも「本店」の所在場所を記載しますが、その所在場所は、 番地まで正確に記載する必要があります。 ただし、、ビル名(建物名)と部屋番号については、記載してもしなくてもよいとされています。 (例えば、本店として「東京都新宿区〇〇町一丁目2番3号〇〇ビル4階」を使用している場合でも ビル名等を省略し「東京都新宿区〇〇町一丁目2番3号」と登記することは可能です。) ちなみにビルの複数室を本店として使用していても 「東京都新宿区〇〇町一丁目2番3号〇〇ビル4階・5階」 のような登記は認められておりません。 この場合、 「東京都新宿区〇〇町一丁目2番3号〇〇ビル4階」 または、 「東京都新宿区〇〇町一丁目2番3号〇〇ビル5階」 として登記するか、もしくはビル名を入れずに、 「東京都新宿区〇〇町一丁目2番3号」 として登記するしかありません。 ※根拠条文等はありませんが、弊所から法務局へ照会をかけた際に上記のような回答となりました。
補足
会社法では【同一商号・同一本店の禁止】というルールがあります。 -------------------------------------------------------------------------------- 商業登記法第27条 商号の登記は、その商号が他人の既にした登記と同一であり、かつ、その営業所(会社にあっては本店) の所在場所が当該他人の商号の登記にかかる営業所の所在場所と同一であるときはすることができない。 -------------------------------------------------------------------------------- 同一の商号とは・・・会社の種類を表す部分を含め、商号全体の表記そのものが完全に一致することをいい、 漢字と平仮名のように、読み方が同一であっても表記が異なる時は同一の商号にはあたりません。 ※上記の商業登記法第27条の趣旨は会社の同一性を誤解することによる社会の混乱を回避する点にあるため、 現存する会社である限り、清算手続き中の会社についても同条の規律は妥当するが、 清算結了後の閉鎖登記簿に係る会社(つまり解散した会社)については同条の規定は妥当しません。 同一の本店とは・・・既に登記された他の会社の本店の所在場所と区分することができない場所に 本店があることをいいます。例えば、他の会社の本店が「〇〇ビル」と既に登記されているときは、 同一商号の会社は本店を「〇〇ビル〇階」として登記することはできません。
▼専門家へのご相談はこちらから(初回相談無料)▼ https://startup-s.info/contact/